2021.10.14
以前、ひょうご味どりの大ファンだと自他共に認めるお笑い芸人のほんこんさんが「『ねぎどっか〜ん』が大好きなんですよ」とお話ししてくださったことがありました。
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これは野乃鳥でお出ししている、メニューで『播州百日鶏タタキ』に『野乃鳥独自の合わせ味噌』と『野乃鳥のポン酢』、そして『ドッカン』との青ネギを乗せた一二を争う人気メニューで、ほんこんさんはもちろん、多くのお客様に親しまれています。
ですが、こちらの商品、鳥マルシェでは通販で売っていません。
なぜならば……そう、『たたき』だから。
鶏肉は基本生では食べることはできないと言われています。
それは、生の鶏肉にはカンピロバクターを代表とする、食中毒菌が付いている可能性が非常に高く、厚生労働省からも注意喚起がなされれている程。
とはいえ食中毒菌は、鶏に限らず、牛や豚などの家畜や、犬や猫といった身近なペットの腸管にいる菌で、極々ありふれたものなのです。
では、なぜ鶏肉はたたきを通販で出せないほど警戒されているのかというと……？
鰹のたたきを食べたことのある方は知っているかもしれませんが、たたきとは表面を軽く火で炙って、中まで火を通さずに切って食べる調理方法のこと。
『鳥刺し』という食べ方もあるのですが、これは生の鶏肉をスライスして食べる物で、一応今回は差別化はしていますが、郷土料理として鳥刺しを食べる南九州ではたたきのことを鳥刺しと呼ぶケースもあります。
因みに、南九州で鳥刺し・たたきとして食べる場合は地鶏が使われることが多いのですが、それでも『器具を温湯で洗浄消毒すること』『鶏の内臓を傷つけないように解体すること』等、県独自の厳しい衛生基準「生食用食鳥肉の衛生基準」が決まっています。
ですが、意外にも九州南部の方は食べ慣れているのか「え？ 本州では食べないの？」「お店で売っていないの？」と驚かれることもあります（苦笑）
それほどまで鶏のたたきを厳重に管理する理由は、どんな鶏でも（鶏に限らず牛や豚でも）、消化器官にはカンピロバクターなど食中毒の原因となる細菌が生息していて、食肉加工作業をする際、豚や牛より鶏の臓器が小さいことから除去が難しく、精肉に付着してしまう可能性が高いから。
それを防ぐ為に鶏肉は火を通して食べることを推奨されているのです。
もし、カンピロバクターで食中毒症状を引き起こしてしまった場合
といった、食中毒症状が出るのですが、幼児や高齢者の方など、抵抗力の弱い方の場合重症化してしまうこともあります。
当然、食中毒症状だけでも相当苦しく、場合によっては命に関わることもあるのですが、食中毒症状から回復したとしても、まれにギラン・バレー症候群に進展し、後遺症が残ってしまうケースあるのがカンピロバクター菌の怖ろしいところ。
ギラン・バレー症候群とは
体の各部分に分布する末梢神経の障害により、四肢や顔、呼吸器官に麻痺などが起こる疾患
ギラン・バレー症候群は発症すると数日で手足が動かなくなったり、場合によっては中枢神経障害性の呼吸不全が起こってしまう怖い病なのですが、カンピロバクターに感染したとしても、数週間から、酷い場合は数年後、十年後に症状が出てしまうこともあり、そうなるとなにが原因だったのか本人ですらわからず、原因究明はもちろん、治療にも時間がかかってしまう可能性もあります。
せっかく美味しく食べてもらった鶏肉のせいでそんなことになったら……。
鳥マルシェでは、一羽一羽手で裁いて、ほぼ無菌状態で真空パック詰めからの、急速冷凍を行い、菌数を極限にまで減らして発送しておりますが、万が一の可能性を考え、お客様の安全性を確保するためにたたきは売らないことにしています。
これは、私たち生産者が守るべき大切な想いだと、思っています。
さて、このような問題でご自宅では食べることが難しい『鶏のたたき』。
ですが、播州百日どりを卸している『野乃鳥』では先ほど紹介した『ねぎどっか〜ん』や『播州百日鶏 タタキ』の販売をしています。
これは各店舗、しっかりとした衛生管理の下で調理しているから可能としているのです。
まず、野乃鳥ではたたきを出す際に、炭火で両面しっかりと焼いてから出しています。
菌の付きやすい肉表面を高温の炭で焼くことによって、殺菌しているのですが、これだけでもかなり殺菌効果が得られます。
鰹のたたきなども、ワラを焼いてその火で炙って腐りやすい鰹の殺菌をしているのですが、古来より続く先人の知恵は偉大です……。
※ワラで焼かれる鰹のたたき※
もちろん、ただの生焼けと、たたきとして殺菌するための加熱は違うものですので、そこはプロの熟練の腕の見せ所。
しっかりと前面を炙りつつ、鶏肉の中の美味しさを封じ込めるように焼くには、熟練のコツが必要なのです（笑）
一般のご家庭で「炭で表面を焼いたから大丈夫」というわけにはいかないので、ご注意ください。
また、カンピロバクターは酸素が全くない状態でも増殖できないのですが、逆に通常の酸素濃度の中でも死滅していく特性があります。
ですので、酸素が3～15％程度という微好気的条件下の腸内でカンピロバクターは増殖していくのですが、この『空気に触れると死滅していく』という特性を利用して、野乃鳥では焼いてから『切って保存』するようにしています。
このようにすることで、炙った表面もしかり、切った表面も空気に触れさせてカンピロバクターを死滅させる可能性を少しでも上げられるように努めているのです。
もちろんこのほか、次亜塩素酸水（次亜塩素酸ナトリウムではありませんよ！！）という、電気分解などの手法で作られる酸性のお水を使って食器や調理器具を入念に消毒し、菌が残されないよう、菌が増殖しないよう徹底管理してます。
この次亜塩素酸水は、昔から食品の消毒などに使われており、食品関連にかかっても大丈夫な代物なので、より安心して召し上がっていただけるかと思います。
次亜塩素酸水とは
次亜塩素酸水 (Hypochlorous Acid Water)は、食品加工等の分野において洗浄・消毒用途などで使用される食品添加物（殺菌料）である[4]。 次亜塩素酸ナトリウムとは異なるものである。
安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのないということで、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで、使用が認められた。
このように、野乃鳥店舗では徹底して衛生管理をした上で、たたきをお出ししていますが、そもそもたたきは人間の免疫力に頼った食べ物（苦笑）
普段から生ものを食べている方は、抗体や、免疫の関係で、多少菌が多いものを食べても大丈夫な場合があります。
ですが、食べ慣れてない方や、ちょっと体調が優れない方などは、少量でもお腹を下してしまったりと症状が出てしまう場合があります。
せっかく非日常を楽しんで、美味しい物を食べようとしてくださっているのに、お客様の運、体調、確率に任せてしまうのは生産者として、販売者として許せないところですので、もし、ひょうご味どりのお肉を通販で買った場合でも、たたきや鳥刺しにはせず、別のもっと美味しい食べ方で食べていただければと思います。
さて、ひょうご味どりは『ただガスで焼いただけでも美味しい』と言われるほど、味が濃厚で、歯ごたえもある地鶏ですので、ご自宅でたたきを作らずとも美味しくお召し上がりいただけますが、中には「どうしてもたたきで食べてみたい！」という方もいるかもしれません（笑）
一番良いのは、野乃鳥に来ていただけることなのですが、残念ながら野乃鳥は２０２１年現在、大阪、兵庫と、関西圏内での展開のみとなっています。
そのため、他の地方の方にとってはちょっと遠い味になってしまいます。
ですが！！
こちらでこっそりと鳥ソムリエが、ご自宅でもより安全に、たたきに程近いお味の料理を召し上がれる『自宅で安心して食べられるたたきの作り方』をご紹介します！！
※鶏のたたきイメージ※
作り方は思っているよりも簡単。
まず鶏むね肉を薄く（5mm～1cm）にスライスし、その表面を火で炙ります。
できれば炭火のほうがより美味しくいただけるのですが、逐次炭火を起こすのも大変でしょう。
その場合はガスコンロなどでも大丈夫。串に刺してさっと炙り焼きにしましょう。
お店では、炙ってから切って表面を空気に触れさせてカンピロバクターへの対策をしていますが、ご自宅ではより菌数を確実に減らすためにも、『切ってから炙る』を徹底してもらえればと思います。
その後は、細かく切ったネギをのせて、たっぷりのポン酢をかけたりして美味しく召し上がっていただければと思いますが、これでも100％安全……とは残念ながら言えません。
あくまで『感染リスクの低減』というところですので、人間の免疫力に頼って食べていただいている……という点でどうしても自己責任……となってしまいますので、そこはご了承ください。
もちろん野乃鳥では、たたきメニューの提供の場合、「提供後、約15分以内に召し上がっていただくように」「二十歳未満の方、ご高齢のお客様・体調の優れないお客様にはご提供しないように」といった注意をしつつ、さらに徹底した衛生管理をしてお出ししているので、よりリスクが低減されているのです。
とはいえ、珍しくも美味しい地鶏のたたきは一生に１度は食べていただきたい料理。
ぜひ、野乃鳥の近くへお越しの際は、ほんこんさんも愛して止まない『ねぎどっか～ん』や『播州百日鶏 タタキ』、また、要予約となりますが『播州百日鶏 造盛り合わせ』など、本当の鶏の味の真骨頂を食べていただければと思います。
【ねぎどっか～んが食べられるお店】
